北川景子主演『女神の教室 リーガル青春白書』

法律家 橋本雄太郎

「令和5年 橋本塾 特別号」

これまで私はテレビドラマを見る機会は殆どありませんでした。時間的な余裕がなかったからです。最近、家族が、これを録画しておけば私が興味を持って見るのでは、と思って録っておいたくれたテレビドラマが「女神の教室」でした。

裁判実務教員としてロースクールに赴任した主人公(北川景子)がそこで悩みながら学生を指導していくという内容のようです。担当科目は、かつて私が担当していた刑事訴訟法という設定です。

そういうシチュエーションなので、かつての私がやっていたことと重なり合う部分が多々見られるので、ドラマの予告を見た私の家族が録画したと思います。せっかく録ってもらったので、お行儀が悪いのですが、食事をしながら第1回目を見ました(相変わらず時間に追われています)。私はドラマを見ながら2つのことを考えていました。

その一つは、大学院博士課程の頃、教授に頼まれてアルバイトで司法試験の予備校のようなところで刑法を担当していた頃のことを思い出していました。合格のみを目指す受講生相手なので、まさに受験テクニックの面から、学問的な考察は一切抜きにして講義していていた姿を思い出したことです。それが、その場面の正解と思って必死に講義していました。自分でいうのもなんですが、意外に人気のある講義でした。

しかし、2年経ったとき、教授から、「学問の道」を忘れられると困るから、アルバイトは止めなさいといわれ、足を洗いました。ドラマでいうと、北川景子のライバルとなる男性教員の取っている教え方が、まさに私がやっていた当時の講義の仕方です。

ただ、ロースクールは、正式には専門職大学院という、大学の中の一つの教育機関で、司法試験の予備校ではありません。学問として担当科目を教授していかなければなりません。他方、合格者が少ないロースクールは、ご存じのように次々に廃校になっています。何が何でも、合格者を出すという実績を上げることが至上命題になっています。

まさに、この両立し得ない目標を、どう調和を取りながら教えていくかが、わが国のロースクールの課題であり、このドラマの重要なテーマになっているのです。これから、このドラマがどのように展開していくのかは知りません。楽しみです。

そこで考えたもう一つのことが、このテーマは、救急救命士養成課程の講義にも当てはまるものではないか、ということです。

救急救命士養成課程は、まさに、救急救命士国家試験合格という目標の中で、講義及び実習がなされています。しかし、本来、救急救命処置及び病院前救護について、学問的な視点から勉強することによって現場で救命処置ができるようになるための課程で、その習熟度のチェックとして国家試験が存在する、という立て付けになっているはずです。

しかし近年、コスパと、コースや学校の生き残り戦略から、合格することを主眼とした教育の色が濃くなってきたような気がします。エルスタはじめ、養成機関の教壇に立っていると、受講生の反応から、肌でそのことを感じ取ります。已むを得ないこととは言いながらも、マニュアルやプロトコールを暗記することのみ目を向けて、何故そのプロトコールが出来上がったのかという本質的な問題に関心なく素通りをされてしまっています。

その結果、救急現場でプロトコールを思い出せないとパニックになり、何も対応できなくなるというケースが実際に起きるようになってきました。本質から勉強している人であれば、結論を忘れても、その成立したプロセスを辿る能力を有しているので、パニックにならずに対応することが可能です。

養成機関で教えている先生も受講生も、もう少し余裕を持ってゆったりとした気持ちで、受験合格だけを目指すのではなく、その先にある救急現場での迅速的確な対応ができるようになることを見据えて、本筋に立ち返ってほしいと願っています。危機管理の面からも必須のことと考えます。

私がリモート塾を始めた意図の一つに、こうした現状を憂いて、少なくとも、法律学の視点から、養成課程で十分実施されていないことを補完する、というものがありました。上述の問題意識を持っている皆さんの塾への参加を期待しています。

プレホス寺子屋「橋本塾」
塾頭 橋本 雄太郎
 
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2020年までに発行された法律家橋本雄太郎のメールマガジン「EMSマガジン」内のメッセージをまとめいます