しない勇気|EMSマガジン第28号

法律家 橋本雄太郎

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(この記事は2020年10月発行「EMSマガジン第28号」の一部内容です)

法律家 橋本雄太郎~時論~

 

「しない勇気」

~EMSマガジン第28号より~

近時の講演・研修・講義の依頼テーマや、その際に受ける質問として多いものとして、DNAR、不搬送、頻回要請傷病者対応の3つが挙げられます。

いずれも、積極的に何かを実施するということではなく、実施しない不作為により、後々紛争になるおそれのある現場対応である点が共通しています。

講演依頼や質問を度々うけるということは、応急処置の技術的な問題を除くと、病院前救護活動の中で、搬送しないことになる、これらの3つの場面が、現場救急隊員が抱えている不安であることの証左とも言いえます。

そこで、3つの場面の中核部分を取り出してみると、何もしない勇気を持てないところに本質があることが理解できます。

搬送してしまう、積極的な処置を実する方が精神的にも楽で、安心できます。しかし、そうすることが相応しくないと考えられる場面なのです。

何も「しない」という勇気は、
何か「する」勇気よりも決断が難しい問題です。

何も「しない」ことにする勇気を持つためには、しっかり観察し、周辺事情を正確に把握しておくことが当然の前提となります。

そして、後々無用な紛争に巻き込まれた場合に、何もしなかった行為の正当性が認められるためには、的確にその経緯を救急活動記録票等に記載しておくことが必須です。そして、現在の、さらにこれから先の救急現場においては、何もしない不作為の活動が増えてくるものと想像します。

したがって、現場救急隊員は、何もしないことについて勇気をもって決断することが求められることになります。その決断を容易にするための判断力の養成と訓練を怠らないことが望まれます。そして、救急活動記録票への記載方法について、しっかりと身に着けておくことが肝心と考えます。

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プロフィール

 法律家
 橋本雄太郎
 [ハシモト ユウタロウ]

~コメント~
病院前救護及び救急医療をめぐる法律問題、災害時の法律問題を主たる研究対象にしています。杏林大学教授として刑事法・医事法を講義してきましたが、約25年前から、消防大学校、救急振興財団東京研修所・九州研修所、各消防本部消防学校等で講義を行い、各地のメデカルコントロール協議会や消防本部の主催する研修会、関連学会等で講演等を頻繁に実施しています。国や自治体の設置する委員会委員も数多く拝命してきました。
主著として『病院前救護をめぐる法律問題』、『救急活動をめぐる喫緊の法律問題』、主編著として『救急活動の法律相談』等があります。


(学歴)

慶應義塾大学法学部法律学科卒業
慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学

(職歴)

杏林大学社会科学部助手、専任講師、助教授を経て教授
大学院国際協力研究科教授を兼ねる
ロンドン大学高等法律学研究所訪問研究員(1997~1998年) 
現在  香川大学客員教授

(学会役員歴)

オーストラリア学会副代表理事
日本航空医療学会評議員
日本病院前救急診療医学会理事

(社会における主な活動歴)

東京消防庁消防行政特別協力賞(平成11年)
総務省消防庁救急業務あり方に関する検討会委員
東京都メディカルコントロール協議会委員
東京消防庁救急懇話会委員
横浜市救急業務委員
さいたま中央地域医療事故対策委員
山形市救急業務あり方検討会委員
茨城県北部地域医療顧問
東京都大学サッカー連盟評議会議長・東京都サッカー協会理事


単著
『病院前救護をめぐる法律問題』(東京法令出版、平成18年)
『テキスト 救急活動をめぐる法律問題』(荘道社、平成20年)  
『救急活動をめぐる喫緊の法律問題』(東京法令出版、平成26年)
編著
『救急活動の法律相談』(新日本法規出版、平成22年)
『刑事訴訟法入門』(八千代出版、平成23年)
DVD
『救急隊員に必要な法律基礎知識』 (新日本法規出版)
『救急活動の法律相談シリーズ 全6巻』 (新日本法規出版)



シリーズ紹介

時論

法律家 橋本雄太郎

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