紛争になった時に備えて、自分の身を守るために、ペン型の録音装置をつけて活動し、紛争になったときに法的に役立たせることは可能でしょうか?

法律家 橋本雄太郎

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《質問》
「紛争になった時に備えて、自分の身を守るために、ペン型の録音装置をつけて活動し、紛争になったときに法的に役立たせることは可能でしょうか?」

~2019年1月発行「EMSマガジン第8号」~最近、繰り返し受ける質問に答えて~より~
(全文907文字)

この種の質問が、最近は、どの講義、セミナーに伺っても、質問として繰り返し出されるようになってきました。

この種の質問が増えてきたということは、救急隊員も、搬送対象傷病者やその家族から、クレームや訴訟を起こされる可能性がある時代になってきたことを、日常の活動の中で、肌で感じるようになってきたからではないかと想像しています。

そして、消防幹部に伝えても、十分な対応が得られないので、自助として、自ら対応措置をとっておかなければならないと感じているからではないでしょうか。

公務員である救急隊員が密かに自分の公務としての活動を録音することは、盗聴行為で許されません。録画も同様です。傷病者側のプライバシーの侵害になる虞があるからです。証拠としての信用性が高いと看做されることがあっても、許可なく違法に録音された公務の内容より、私人のプライバシーの方が優先されるからです。

しかし、手順を踏み、適正な手続きを経ていれば、違法な行為とはされない可能性があります。すなわち、消防側が、救急活動に関して無用な紛争を防止することを目的に、録音・録画されたものの管理を厳重に扱うことを明確にしたうえで、市民に対して、的確な広報手段で周知徹底させ、一定期間不服申し立ての開会を与えた上で、実施することにすれば、いくら傷病者情報が個人情報保護法の、いわゆる機微情報にあったとしても、そこに、第三者の画像が写ったとしても、法的には問題がないと考えます。

勿論、すでに、救急車内には、種々の録音・録画装置が他の目的のために登載されており、それらについても、市民に告知しておく必要がないわけでもありません。さらに、確認のために、傷病者ないしその家族に、紛争防止のために、記録を取らしていただいている旨を、直接事前告知しておくことをしておけば万全と言い得ます。

要は、このような手順を踏むことによって、これらの録音・録画は、盗聴等に当たらず、適法な記録として、紛争の際に、有効な解決手段になり得るものと考えます。

ただ、自分たちの身を守るために、搬送対象傷病者や市民に黙って録音・録画することは、地方公務員である救急隊員にはふさわしくない行為と言い得ます。

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~時論「0.3%のための救急救命士養成教育なのか?」
(2019年1月発行「EMSマガジン第8号」より)

 

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プロフィール

 法律家
 橋本雄太郎
 [ハシモト ユウタロウ]

~コメント~
病院前救護及び救急医療をめぐる法律問題、災害時の法律問題を主たる研究対象にしています。杏林大学教授として刑事法・医事法を講義してきましたが、約25年前から、消防大学校、救急振興財団東京研修所・九州研修所、各消防本部消防学校等で講義を行い、各地のメデカルコントロール協議会や消防本部の主催する研修会、関連学会等で講演等を頻繁に実施しています。国や自治体の設置する委員会委員も数多く拝命してきました。
主著として『病院前救護をめぐる法律問題』、『救急活動をめぐる喫緊の法律問題』、主編著として『救急活動の法律相談』等があります。


(学歴)

慶應義塾大学法学部法律学科卒業
慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学

(職歴)

杏林大学社会科学部助手、専任講師、助教授を経て教授
大学院国際協力研究科教授を兼ねる
ロンドン大学高等法律学研究所訪問研究員(1997~1998年) 
現在  香川大学客員教授

(学会役員歴)

オーストラリア学会副代表理事
日本航空医療学会評議員
日本病院前救急診療医学会理事

(社会における主な活動歴)

東京消防庁消防行政特別協力賞(平成11年)
総務省消防庁救急業務あり方に関する検討会委員
東京都メディカルコントロール協議会委員
東京消防庁救急懇話会委員
横浜市救急業務委員
さいたま中央地域医療事故対策委員
山形市救急業務あり方検討会委員
茨城県北部地域医療顧問
東京都大学サッカー連盟評議会議長・東京都サッカー協会理事


単著
『病院前救護をめぐる法律問題』(東京法令出版、平成18年)
『テキスト 救急活動をめぐる法律問題』(荘道社、平成20年)  
『救急活動をめぐる喫緊の法律問題』(東京法令出版、平成26年)
編著
『救急活動の法律相談』(新日本法規出版、平成22年)
『刑事訴訟法入門』(八千代出版、平成23年)
DVD
『救急隊員に必要な法律基礎知識』 (新日本法規出版)
『救急活動の法律相談シリーズ 全6巻』 (新日本法規出版)



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